◇編集後記◇
発行は遅れ気味ではあるが、「とい」は誕生以来、四半世紀を迎えた◆この国は格差がますます拡大する社会になろうとしている。人々は効率主義、成果主義、拝金主義に支配され、人間のこころは崩壊しようとしている。国民は、たとえば「官から民へ」というワンフレイズ・ポリティックスに踊らされ、その中味を吟味することのない思考停止状態に陥っている◇和田は一端(いちはな)駆けに、こういった社会状況の一端を問題提起する。教育もまた、時代の波に飲み込まれてしまっている。その文体は幾分いつもよりは硬質ではあるが、それだけにかえって、教育にかける熱情が感じられる一編である◇松崎は小説『戦記』を再開した。後半に花見のくだりが丁寧に織り込まれている。時今しも桜の季節。私たちが忘れかけている、ゆったりとした時間が流れる。最後の最後にエリオットの「四月は一年で一番残酷な月」を思い出す。しかし、なんといっても、懐かしい世界が広がっている◇前回に引き続き、楠瀬はホプキンズの詩を一編、解説する。読みっぱなしではなく、書くことによって、考えが整理され、凝縮された詩の世界が見えてくるのを実感する◆今こそ、すべてのことを「問いなおす」ことが求められている。多くの同人の皆様、読者の皆様が、次回の「とい」に結集されんことを祈ります。<く>